2020 08.06
ICT施工の基礎知識

ICT施工は労働力に与える影響とは?若手・女性・外国人などの活用は

労働力不足が大きな問題となっている建設業界。厚生労働省のデータによると、その就業者数は1997年をピークに減少を続けています。

さらに就業者数の年齢の内訳をみてみると、55歳以上の就業者は全体の約34%、29歳以下の就業者数は約11%となっています。今後は高齢就業者の加齢による離職により、就業者数の大幅な減少が見込まれています。加えて、若手の数が少ないため、高齢就業者の技能を継承することも難しくなっています。

この打開策として国がいま推進しているのが、建設業へのICT(情報通信技術)の導入です。

本記事ではそのICTを導入した建設システム「ICT施工」について説明するとともに、ICT施工が建設業の労働力に与える影響について解説します。

ICT施工で労働力不足を解決できる?




建設現場にICTを導入することで、建設生産システム全体の生産性向上を目指す「ICT施工」。

国土交通省は、建設現場の労働力不足を解消する手段として早くから建設現場へのICT導入を推進してきました。平成28年からは専門家委員会の審議結果を踏まえ、ICT施工を建設業界に普及する取り組み「i-Construction(アイ・コンストラクション)」が始まっています。

i-Constructionは、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取り組みと定義されています。

この取り組みでは以下の3つの柱を通じて、これまで多くの人手を頼りにした労働集約的で生産性の低い現場運営や、不効率なコンクリート工の改善、施工時期の集中などを改善し、建設現場を魅力的な職場にすることが目標とされています。

【3つの柱】
・ICT の全面的な活用(ICT 土工)
・規格の標準化など
・施工時期の平準化

ICT施工はこのうち「ICTの全面的な活用(ICT 土工)」に該当するもので、3次元測量データや3次元設計データを一元化して活用することで、測量や施工、出来形管理、検査、書類作成のプロセスを省力化・短時間化・高精度化するものです。

この短時間化・省力化を実現すれば、現場に必要な人員や拘束時間を減らすことができます。また、高精度化によるやり直しの防止により工期の短縮を実現することも可能です。こうした改善を実施することで、建設現場全体の労働力不足を解消できると期待されているのです。

ICT施工で少人数での対応が可能に




ICT施工や先に挙げた「ICT土木」においては、たとえば以下のような短時間化・省力化が実現するといわれています。

<ICT土木による作業工程の一例>

【測量】ドローンで撮影した画像データやレーザースキャナーを活用して3次元測量データを作成することで、測量日数を大幅に削減する

【設計・施工計画】3次元測量データと設計図面から施工土量などを自動算出する

【施工】3次元設計データや位置情報をもとに自動ガイダンスを行うICT建機を使用することで丁張りを不要に

【検査】ドローンで撮影した画像データやレーザースキャナーを用いた現況データを活用することで、出来形管理や検査用の書類作成が省略される

平成30年の国土交通省の調査によると、平成29年度にICT活用工事を受注した事業者においては、起工測量から工事完成まで土工にかかる一連ののべ作業時間について、平均で26.2%の削減効果がみられました。

このように、今後業界全体でICT施工による作業時間の削減が進めば、将来労働力が減少するとしても、現在よりも少人数の体制で持続的に建設事業を運営することが可能となるでしょう。

ICT施工の導入で多様な人材の活用が可能に




ICT施工の導入で新たに必要になるプロセスもあります。それは、3次元測量データや3次元設計データなどを制作・管理する人材です。

このプロセスはICT施工にとって欠かせないもので、ICT施工のコストを低減するためには内製化が欠かせません。

人材の確保に頭を悩ませている方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの人材は必ずしも建設工事の現場に常駐する必要はありません。

社内で情報を的確に受け渡すことができるコミュニケーションの体制さえ整っていれば、これまで時間的・地理的・就業文化的な制約などにより現場で活躍することができなかった人材がデータの制作・管理という面で重要な役割を担うこともできます。

企業によっては、これまで事務業務に就いていた女性社員が3次元設計データの作成や3次元測量データの処理、土量の自動計算処理などを担当している場合もあるようです。

また、多言語対応のソフトウェアを使用し、多言語マニュアルさえあれば、外国人人材がこの業務を担うことも可能でしょう。

現場における建機の操縦においても多様な人材の活用が可能です。

3次元設計データや位置情報をICT建機に送信することで自動コントロールが実施できれば、高度な技能が必要な作業がある現場でも、非熟練の若手人材や外国人従業員も活躍することができます。

自動コントロールが可能なICT建機を活用すれば、若手人材や現場経験の浅い外国人作業員が意欲的に活躍することができるうえ、人手に余裕がなく技能の伝承が難しい現場でも持続的に運営を続けることができます。

ICT施工は労働力不足を解消する鍵となるシステム




ICT施工はこれまで述べてきたように、さまざまな点で建設業における現場の人手不足を解消する可能性を秘めています。

導入初期はどうしても新しい積算基準や納品物の対応、ソフトウェアや機器の操作方法の習得、従業員への教育、ICT建機のレンタルや購入などの手間やコストがかかってしまいます。

しかし、これらを一概にデメリットと捉えて導入を見送ることは、今の時代において後に大きなリスクを生むことにもなりかねません。

現在、国土交通省は2025年までに建築現場の生産性を20%向上させることを目標としており、現在盛んに講習や補助、助成などで普及を促進しています。そのため、ICT施工は今後「当たり前」の技術になっていくことが予想されます。

ICT施工が普及すれば、建設業における1案件の平均的な人件費は減少し、施工期間も短くなるでしょう。従業員の平均的な就労環境も拘束時間など現在の「3K」呼ばれる状況は改善されていきます。新しいシステムに順応しやすい若手従業員の待遇は現在よりもより格段に良くなっているかもしれません。

こうなれば、ICT施工導済の企業には就業環境の良さから人手が集まるようになり、導入前の企業には自然と人手が集まらなくなる可能性があります。

現在、労働力不足の問題を抱えている場合は、今後の建築業の動向についても考えたうえで、ICT施工の導入について詳細に検討する必要があるのです。
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