2020 05.14
ICT施工の制度と仕組み

国土交通省が推す「i-Construction」とは?「ICT施工」との違いや背景まで

現在、国を挙げて推進されている「ICT施工」。そのなかで、国土交通省は「i-Construction」というプロジェクトを推進しています。「ICT施工」と「i-Construction」は何が違うのでしょうか。また、国や地方自治体の情報内で使用される用語「情報化施工」は何を指すのでしょうか。本記事ではさまざまある用語の意味や、国土交通省の推進するプロジェクトと「ICT施工」の関連について、これまでの背景や制度などに基づいて解説します。

「ICT施工」と国土交通省「i-Construction」の関係



行政の発信する情報を調べていると、国土交通省は「ICT施工」に関して「i-Construction」と呼ばれる取り組みを行っていることに気が付きます。また、この取り組み内に「ICT施工」という用語は使われません。なぜなのでしょうか。

実は、「ICT施工」は民間で使われている通称なのです。

2008年ごろまで、ICT(情報通信技術)を活用した施工については、一般的に「情報化施工」と呼ばれていました。さらに、国土交通省が同分野の活用を推進するため、有識者を集めた普及推進の検討を実施する際には会議名称を「情報化施工推進会議」、報告書を「情報化施工推進戦略」としたため、現在でも行政は「情報化施工」の用語を使用しています。

一方、民間では2010年ごろから「情報化施工」のことを通称である「ICT施工」と呼ぶことが増えました。用語としてわかりやすいため、この名称は民間では広く使われるようになりました。

さらに2015年、国土交通省は「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等を建設現場に導入することで生産性向上図る方策について議論するために「i-Construction委員会」を設置し、2016年には報告書「i-Construction~建設現場の生産性革命~」を発表しました。情報化施工の活用はこの建設現場の生産性向上施策「i-Construction」のうちの一つです。

「i-Construction」は国が取り組んでいるICTを活用した建設現場の生産性向上の取り組み全体を指すと考えればよいでしょう。

国土交通省が目指すICT技術の全面的な活用




国土交通省は、有識者委員会報告書「i-Construction~建設現場の生産性革命~」でi-Constructionを推進するために、以下の3つのトップランナー施策を打ち出しています。

①ICTの全面的な活用(ICT土工)
②全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)
③施工時期の平準化

まずは上記3つの施策を進めることにより知見を得て、ゆくゆくはすべての建設現場にi-Constructionの取り組みを浸透させるとしています。

国土交通省は①について、企業がICT土工に必要な設備投資を行うことを支援するため、平成28年度からICT土工に対応した新しい積算基準を導入し、一定期間はICT土工の導入コストが軽減される取り組みを行っています。

また、ICT土工に対応できる技術者や技能者を育成するため、民間の事業者と協力を行いながら全国で講習を開催しています。

今後増加が見込まれるICT活用工事




先に述べたように、国土交通省は建設現場へのICT施工(ICT土工)導入を促進するため、平成28年から土木工事についてICT施工に関する経費を計上することを認めています。

建設事業者はICT施工に関する設備や建設機械を導入する費用の一部を経費として計上することができるため、ICT施工を実施することを通じて設備導入の費用負担を軽くすることができます。

また、対象の土木工事は大きく分けて「発注者指定型」「施工者希望型」の2種類があります。

「発注者指定型」は、発注者からの指定でICT施工を実施する工事を指します。国土交通省が定める「ICT活用工事積算要領」に沿ってICT施工に必要な経費を当初設計で計上する必要があるものです。

「施工者希望型」は、受注者の希望によって「ICT活用工事」を実施する工事で、「ICT活用工事積算要領」に沿ってICT施工に必要な経費を設計変更によって計上するものです。

平成30年度は国土交通省直轄工事では1,645件、都道府県・政令市では2,297件の公告が出され、多くの事業者がこの制度を活用してICT施工に必要な設備導入を進めています。

ICT施工に関連する経費を計上できれば、ICT施工の設備を導入しながらプロジェクトにおける利益を確保することも可能になります。このような国の助成を活用して、今後も多くの事業者がICT活用工事に参入することになるでしょう。

ICT施工にデメリットはないのか




国土交通省や地方自治体が必要経費の一部を補助するとはいえ、ICT施工に関する設備の導入費用や人材の育成の負担は事業者にとっては大きな負担になります。そのため、導入にはためらいや不安が生じる方もいるでしょう。施工におけるデメリットなどはないのでしょうか。

一般的にICT施工の実施において懸念される点としては以下のようなものがあります。

・無線通信が届かない環境や、遮蔽物の多い環境では利用が難しい
・PCやハードディスクなど、ソフトウェアやデータ運用関連の設備投資が必要になる
・ICT施工が効率化につながる工程ばかりではない

ICT施工の生産性向上の効果が得られるのは、ある程度規模の大きな建設工事だといわれています。都心や市街地における中小規模の工事については、まだ従来の施行手法で対応しなければならないものが大半でしょう。
また、大規模な工事においても単純な掘削作業などICT施工が必要のない工程も多く残っています。

ICT施工の導入に際しては、すべての施工機器をICT施工関連機器に入れ替える必要はありません。必要に応じて部分的に取り入れることで十分効果が発揮できます。また、部分的な導入であっても、行政の公告する工事においては経費を計上できることもありますので、確認してみましょう。

まずは効果が発揮できる現場をピックアップして導入していくことで、上記で示したデメリットのリスクを減らすことができます。

国土交通省「i-Construction大賞」に見る成功事例


ICT施工を適切に取り入れるためには、他社の事例がよい参考になります。

国土交通省は多くの事業者にモデル例を提示するため、表彰制度「i-Construction大賞」を設け、各社の取り組みの概要を公表しています。

現場の生産性を向上させるためには、どのようにICT施工を活用すべきか、どの程度の規模の建設工事に適用すべきか、他社はどのような装置を使っているのかなど、ICT施工の温度感を知るためによい資料になります。

ICT施工の具体例を知りたい方は、国土交通省のホームページから確認してみましょう。

国土交通省のICT施工の取組詳細は最新要領の確認を




ここまで述べてきたような国土交通省のICT施工推進の取り組みは、同省の「i-Construction」の特設ページで確認できます。

ICT施工の分野は、普及のために制度が日々見直されているうえ、測量・施工機械などの向上も目覚ましい分野です。より実効性のある導入プランを実現するためには、制度や実務に関する情報収集が欠かせません。

上記のホームページ等に目を通すとともに、省庁や民間企業主催の講習や勉強会に参加することで、自社に有益な情報を得ていきましょう。
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