2020 04.28
ICT施工の基礎知識
ICT施工のデメリットは?導入コストや技能訓練等について解説!
建設現場の生産性向上を実現するICT施工には「デメリット」があるといわれます。「費用が高額」「技能が身につかない」「人材育成が大変」など多くの意見がありますが、これらを理由にICT施工の導入を見送るべきではありません。
本記事では、その理由をICT施工の現状と今後の見通し、サポート体制などから解説していきます。
建設業の測量や設計・施工、検査などについて、情報通信技術(ICT)を活用することで高効率・高精度の施工を行うICT施工。
国は人手不足が大きな問題となっている建設業の生産性を向上させるため、平成20年ごろから建設現場でのICTの活用推進に取り組んできました。
しかし、それから十数年が経った現在においても、一部にしかICT施工は普及していません。その理由は導入に際して高額な設備費用や、ICT施工関連機器やソフトを取り扱う人員の育成負担など「デメリット」があるという印象が根強いからです。
【ほか指摘されやすいデメリット】
しかし、これらは本当に「デメリット」なのでしょうか。
ICT施工についての「デメリット」が盛んに叫ばれる背景には、バブル崩壊以後の建設業の業界構造が深く関係しています。
20年ほど前、建設業従業員がピークを迎えた直後にバブルが崩壊したため、土木・建設工事受注数は低迷を続け、長く人余りの状態になりました。そのため、人件費を安く抑えることが可能となり、建設現場では長らく設備投資を行わず、人の技能や人数に頼った運用が一般的になりました。機械設備を導入するよりも、人を多く雇って乗り切るほうがコストを抑えられたのです。
しかし、平成の終わりになると状況は変わりました。景気の回復やオリンピック開催に伴う需要増、相次ぐ災害の復旧などにより土木・建設業界は深刻な人手不足に陥っています。
いまICT施工について言及されているデメリットの多くは、バブル崩壊後の人余りの時期の発想に基づいてなされているものが大半です。
人手不足のいま、安く技能の高い人手を集めることは不可能です。ならば、設備に投資を行い、熟練者が少なくとも対応できる「システム」を整備しなければなりません。
また、通信環境の不便や代替機のなさ、システムダウン等についても、導入促進開始当時の10数年前と比較すると、行政や民間事業者のサポート体制がずいぶん整ってきました。想定されるトラブルに関しては、事前に関係者に相談すれば解決できることが大半なはずです。
それでも、万一の事態が心配という声もあるでしょう。加えて、職人の重要な「技能」がICT危機に奪われてしまうことへの懸念や嫌悪感が大きい方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、建設業界のICT施工への移行は避けられません。
国が建設業へのICT技術の導入を「i-Construction」の普及事業として掲げ、大きくバックアップする姿勢を示している以上、今後現場へのICT普及は広がるでしょう。
これは、過去に人手で行っていた排土作業がブルドーザーにとって代わられた時代の変化と同様です。直接手で排土作業を行う技能やブルドーザーの故障時に人手でバックアップするノウハウも貴重なものですが、ブルドーザーの効率の良さには代えられません。
同じように、今後はブルドーザーや油圧ショベルの繊細な操作技能よりもICT建機の操作やソフトを使った3次元設計データの作成、3次元出来形管理など技能・スキルが必須になってくるでしょう。
従来の建設現場の視点から考えると、ICT施工にはデメリットがあるように見えます。しかし、だからといって社会の変化から目を背けて導入を見送るべきなのでしょうか。
大半の人がICT施工の「デメリット」として考える費用は確かに負担です。いずれICT施工の導入を考えてはいるものの「まだ費用が高いのではないか」と、技術が普及し、施工機械やソフトの価格の下落を待っている方も多いかもしれません。
一方、ICT施工の技術が多くの事業者に普及する前だからこそ、得られるメリットがあります。それは「補助金」です。
現在、国や地方自治体はIT導入補助金、省エネルギー型建設機械導入補助事業、ものづくり補助金などで施工機械やソフトウェアの導入を支援しているほか、生産性向上や機械購入に伴う税制優遇、研修や技能訓練を実施するにあたっての賃金や経費の助成などを行っています。
また行政が発注者となるICT活用工事においては、指定される要綱に従ってICT施工に必要な経費を計上することもできます。
そのため、ICT施工の導入の方法によっては、初期費用を抑えつつ、受注案件の利益を確保することも可能なのです。
また、他社に先んじてICT施工を導入することができれば、ICT施工の実績に応じて工事成績評点が加点されるため、その後の入札を有利に進めることもできます。
国は建設業における生産性の低さについて深刻なものと認識しており、ICT施工によって「2025年までに建設現場の生産性2割向上」することを目標として掲げています。
そのために、ICT施工のみならず、3Dデータ活用のルール作りやオープンデータの環境整備、ガイドラインの作成、施工時期の標準化、官民の連携強化など、周辺環境の整備を急ピッチで進めています。この取り組み全体が「i-Construction」と呼ばれています。
「i-Construction」の推進により、建設業界の生産性を向上させなければ、土木・建設事業によって支えられている国民の経済活動、生活利便性、安全が維持できないと国は考えているのです。
ICT施工に関するデメリットは、官民によるさまざまな施策により解消されていくでしょう。
そのなかで、建設事業者にはICT施工を「いつ」キャッチアップするかが問われているのです。
上記で説明したように、ICT施工に関する「デメリット」とされるポイントは今後解決されていくことが予想されます。変化に伴うネガティブイメージも、時代の流れとともにいつしか「当たり前」のことと考えられるようになるはずです。
とはいえ、変化の時期には設備投資の資金繰りの悩みや、関係者に知識や技術が浸透していないがゆえのトラブルは発生しがちです。これらの細かなデメリットを解消するためには、行政担当者や同業他社、取引先企業との情報交換が欠かせません。
関係者のICT施工についての対応状況、トラブルに対するバックアップ体制、経費の計上方法のルールなどの情報を業界での情報交換の場や民間企業の講習を通じて収集し、スムーズなICT施工導入を実施しましょう。
本記事では、その理由をICT施工の現状と今後の見通し、サポート体制などから解説していきます。
ICT施工には「デメリット」があるように見える
建設業の測量や設計・施工、検査などについて、情報通信技術(ICT)を活用することで高効率・高精度の施工を行うICT施工。
国は人手不足が大きな問題となっている建設業の生産性を向上させるため、平成20年ごろから建設現場でのICTの活用推進に取り組んできました。
しかし、それから十数年が経った現在においても、一部にしかICT施工は普及していません。その理由は導入に際して高額な設備費用や、ICT施工関連機器やソフトを取り扱う人員の育成負担など「デメリット」があるという印象が根強いからです。
【ほか指摘されやすいデメリット】
- 無線通信が途切れる環境下では使えない(荒天時や首都圏など)
- 機器故障の代替がきかない
- ICT施工に頼りすぎると技能が向上しない
- システムがダウンした際に工期が伸びる
- システムのアップデートなど維持費用がかかる
しかし、これらは本当に「デメリット」なのでしょうか。
ICT施工のデメリットの背景
ICT施工についての「デメリット」が盛んに叫ばれる背景には、バブル崩壊以後の建設業の業界構造が深く関係しています。
20年ほど前、建設業従業員がピークを迎えた直後にバブルが崩壊したため、土木・建設工事受注数は低迷を続け、長く人余りの状態になりました。そのため、人件費を安く抑えることが可能となり、建設現場では長らく設備投資を行わず、人の技能や人数に頼った運用が一般的になりました。機械設備を導入するよりも、人を多く雇って乗り切るほうがコストを抑えられたのです。
しかし、平成の終わりになると状況は変わりました。景気の回復やオリンピック開催に伴う需要増、相次ぐ災害の復旧などにより土木・建設業界は深刻な人手不足に陥っています。
いまICT施工について言及されているデメリットの多くは、バブル崩壊後の人余りの時期の発想に基づいてなされているものが大半です。
人手不足のいま、安く技能の高い人手を集めることは不可能です。ならば、設備に投資を行い、熟練者が少なくとも対応できる「システム」を整備しなければなりません。
また、通信環境の不便や代替機のなさ、システムダウン等についても、導入促進開始当時の10数年前と比較すると、行政や民間事業者のサポート体制がずいぶん整ってきました。想定されるトラブルに関しては、事前に関係者に相談すれば解決できることが大半なはずです。
デメリットがあるからICT施工を導入しない?
それでも、万一の事態が心配という声もあるでしょう。加えて、職人の重要な「技能」がICT危機に奪われてしまうことへの懸念や嫌悪感が大きい方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、建設業界のICT施工への移行は避けられません。
国が建設業へのICT技術の導入を「i-Construction」の普及事業として掲げ、大きくバックアップする姿勢を示している以上、今後現場へのICT普及は広がるでしょう。
これは、過去に人手で行っていた排土作業がブルドーザーにとって代わられた時代の変化と同様です。直接手で排土作業を行う技能やブルドーザーの故障時に人手でバックアップするノウハウも貴重なものですが、ブルドーザーの効率の良さには代えられません。
同じように、今後はブルドーザーや油圧ショベルの繊細な操作技能よりもICT建機の操作やソフトを使った3次元設計データの作成、3次元出来形管理など技能・スキルが必須になってくるでしょう。
従来の建設現場の視点から考えると、ICT施工にはデメリットがあるように見えます。しかし、だからといって社会の変化から目を背けて導入を見送るべきなのでしょうか。
ICT施工を導入するのは「今」が好機
大半の人がICT施工の「デメリット」として考える費用は確かに負担です。いずれICT施工の導入を考えてはいるものの「まだ費用が高いのではないか」と、技術が普及し、施工機械やソフトの価格の下落を待っている方も多いかもしれません。
一方、ICT施工の技術が多くの事業者に普及する前だからこそ、得られるメリットがあります。それは「補助金」です。
現在、国や地方自治体はIT導入補助金、省エネルギー型建設機械導入補助事業、ものづくり補助金などで施工機械やソフトウェアの導入を支援しているほか、生産性向上や機械購入に伴う税制優遇、研修や技能訓練を実施するにあたっての賃金や経費の助成などを行っています。
また行政が発注者となるICT活用工事においては、指定される要綱に従ってICT施工に必要な経費を計上することもできます。
そのため、ICT施工の導入の方法によっては、初期費用を抑えつつ、受注案件の利益を確保することも可能なのです。
また、他社に先んじてICT施工を導入することができれば、ICT施工の実績に応じて工事成績評点が加点されるため、その後の入札を有利に進めることもできます。
国を挙げて推進される生産性革命「i-Construction」
国は建設業における生産性の低さについて深刻なものと認識しており、ICT施工によって「2025年までに建設現場の生産性2割向上」することを目標として掲げています。
そのために、ICT施工のみならず、3Dデータ活用のルール作りやオープンデータの環境整備、ガイドラインの作成、施工時期の標準化、官民の連携強化など、周辺環境の整備を急ピッチで進めています。この取り組み全体が「i-Construction」と呼ばれています。
「i-Construction」の推進により、建設業界の生産性を向上させなければ、土木・建設事業によって支えられている国民の経済活動、生活利便性、安全が維持できないと国は考えているのです。
ICT施工に関するデメリットは、官民によるさまざまな施策により解消されていくでしょう。
そのなかで、建設事業者にはICT施工を「いつ」キャッチアップするかが問われているのです。
デメリットを解決してICT施工を実現しよう
上記で説明したように、ICT施工に関する「デメリット」とされるポイントは今後解決されていくことが予想されます。変化に伴うネガティブイメージも、時代の流れとともにいつしか「当たり前」のことと考えられるようになるはずです。
とはいえ、変化の時期には設備投資の資金繰りの悩みや、関係者に知識や技術が浸透していないがゆえのトラブルは発生しがちです。これらの細かなデメリットを解消するためには、行政担当者や同業他社、取引先企業との情報交換が欠かせません。
関係者のICT施工についての対応状況、トラブルに対するバックアップ体制、経費の計上方法のルールなどの情報を業界での情報交換の場や民間企業の講習を通じて収集し、スムーズなICT施工導入を実施しましょう。
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