2020 09.17
ICT施工の制度と仕組み

i-Constructionのロードマップから読み解くICT施工の今後

国土交通省は、建設現場にICT(Information and Communication Technology;情報通信技術)を取り入れる施策を通じて、建設生産システム全体の生産性向上と魅力あふれた建設現場を実現するための取り組み「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めています。

このi-Constructionには、ロードマップが作成されており、国土交通省の公式WEBサイトで確認することができます。

本記事では、このロードマップについて作成された背景や内容、その目的などを解説します。

i-Construction推進に向けたロードマップとは?




i-Constructionのロードマップとは、2018年6月1日実施の「i-Construction 推進コンソーシアム企画会議第3回」で決定されたもので、国土交通省の「i-Construction」の公式WEBサイト内にPDFが掲載されています。

正式名称は「i-Construction推進に向けたロードマップ」です。

このロードマップは、2016年9月12日の未来投資会議で示された「建設現場の生産性を、2025年までに20%向上させる」という政府方針に基づいて作成されたものです。

そのため、ロードマップには2025年までに実施すべき施策が示されているのです。

i-Construction推進に向けたロードマップの目標と使い方は?




国土交通省は「i-Construction推進に向けたロードマップ」を作成することで、何を実現しようとしているのでしょうか。

「ロードマップ」とは、事業が目標にいたるまでの計画を時系列でまとめた図や表のことです。

i-Construction推進に向けたロードマップでも、「2025年までに建設現場の生産性を2割向上」するために施策を実行することで、「新3K(給与が良い、休暇がとれる、希望がもてる)の魅力ある建設現場の実現」「Society5.0を支えるインフラマネジメントの構築」を実現することが目標として示されています。

この目標を実現するための期間は2017年から2025年までとなっています。

施策については、大きく「3Dデータの利活用」「施工時期の平準化」「オープンデータ化によるオープンイノベーション」「官民連携の体制強化」に分類したうえで、主要な取り組みが時系列で示されています。

このように、ロードマップに施策を落とし込むとどのような効果があるのでしょうか。

i-Constructionは、非常に関係者が多い取り組みです。
主体である国土交通省や施策の決定に関与する有識者、関連団体、i-Constructionの施策を活用する建設事業者に適切に情報を共有するには、取り組みの過去・現状・未来を分かりやすく示す必要があるのです。

時系列でおおまかに取り組みを整理しておけば、国土交通省や有識者、関連団体は、年2回程度開催されているi-Construction推進コンソーシアム企画委員会でロードマップを参照にしながら、政策の進展を確認し、今後の取り組みについて考えることができます。

また、建設事業者も、過去行われてきた施策やすでに完了した施策を振り返るとともに、今後予定されている取り組みや、基準等の改定、政策の適用範囲の拡大・縮小について大まかな見通しをつけることができるのです。

多くの関係者が存在するi-Constructionのような取り組みにおいては、このように簡潔に施策を時系列で示しておくことが、情報共有のために肝要なのです。

確認する際は最終版を「i-Construction」公式サイトから入手




それでは、正式な最新の「i-Construction推進に向けたロードマップ」を入手するにはどうすればよいのでしょうか。

インターネットで「i-Construction ロードマップ」と検索すると、さまざまな結果が表示されます。2020年9月現在では、左上に「2018年6月1日 第3回企画委員会」と表示されたものが最新のロードマップです。

最新版は、国土交通省の「i-Construction」の公式WEBサイトで公表されていますので、サイト経由で確認すると確実でしょう。

「i-Construction推進に向けたロードマップ(案)」と記されたデータについては、2通りあります。i-Construction 推進コンソーシアム企画会議第1回(2017.3.31)に提出されたもの、同企画会議第3回(2018.6.1)に提出され承認されたものです。

最新版は、タイトルから「(案)」が削除されていますが、同企画会議第3回(2018.6.1)に提出されたものと内容に違いはありません。議事録によれば、提出された案に対して意見は出ず、そのまま承認されたためです。

参照:「i-Construction 推進コンソーシアム 第 3 回 企画委員会 議事概要」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/pdf/05.3_kikaku_gijigaiyou.pdf

i-Constructionは今後普及期へ




i-Construction推進に向けたロードマップによると、i-Constructionの重点的な施策の大半は2020年までに予定されており、それ以降は建設現場におけるICT活用の普及・拡大の段階にあることが分かります。

建設事業者に対する情報提供の面では、2017年度からi-Constructionの導入の参考となる事例表彰制度「i-Construction大賞」が実施されるなど、ICT施工に参入を検討する事業者のための過去事例の収集・公開などが進められてきました。

2019年度からはi-Construction大賞に地方公共団体部門が設置され、各自治体の優れた取組についても表彰、共有されるようになっています。

参照:「2020年8月4日 i-Construction推進コンソーシアム 第6回企画委員会 資料-4」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/pdf/04.6_kikaku_siryou4.pdf

ほかにも、2019年2月には国土交通省によるオンライン電子納品の試行が実施され、2020年中の運用開始が目指されています。

参照:「「オンライン電子納品」の試行を実施します」(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_000538.html

このように、さまざまな規模の事業者が導入を検討しやすく、また、導入後も運用しやすい環境が整ってきています。つまり、ロードマップに記載された普及・拡大施策が進行しているのです。

i-Construction推進に向けたロードマップは2025年への道しるべ




i-Construction推進に向けたロードマップは、建設事業者が今後の経営方針を考えるうえで非常に有益な情報となり得ます。

ロードマップ上に示されたi-Constructionの目標は、2025年時点で「新3K(給与が良い、休暇がとれる、希望がもてる)の魅力ある建設現場の実現」「Society5.0を支えるインフラマネジメントの構築」を達成することです。

ここから考えるに、2025年に向けて建設事業者におけるICTの活用は国土交通省の旗振りの下、急激に進んでいくことが予想できます。支援策や活用インフラ整備もますます拡充していくでしょう。

つまり、2025年に向け、建設事業者におけるICT施工の導入は避けて通れないものになっていくのです。

「i-Construction推進に向けたロードマップ」を見れば、国土交通省による取り組みが、現在どの段階にあるかを1枚で確認することができます。各建設事業者は、ICT施工の普及がどの程度進んでいるのか、自社に活用できる取り組みがないかを確認のうえ、支援策やサポート体制が充実した適切な時期にICT施工の導入に向けた一歩を踏み出すことが必要でしょう。

本ロードマップは、建設事業者がICT施工の導入に踏み出すための適切な時期を知る道標でもあるのです。

(2020年9月17日)
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