2020 05.14
ICT施工の基礎知識

「ICT施工」を実施する目的は?国の施策・民間事業者のメリットを解説

いま建設業では話題の「ICT施工」。その目的はなにかご存知でしょうか。本記事では建設業におけるICT(情報通信技術)の活用を推進する国と、その施策を導入する民間事業者の双方の視点から「目的」や「メリット」について解説します。

国が「ICT施工」を推進する目的は何か




国は建設業におけるICT施工の導入について「i-Construction」という名称の取り組みを進めています。
この目的は、建設業において「ICTの全面的な活用」を実施することで、建設業界全体の生産性の向上をはかることにあります。

ちなみに、「i-Construction」において「ICT施工」の用語はあまり用いられません。「ICTの全面的な活用」にあたる言葉として「ICT土工」や「ICT舗装工」「ICT法面工」など具体的な施工名を使用した用語が使われます。「ICT施工」はこれらを大きくとりまとめた用語として使われています。
「ICT施工」が多く使用されるのは、民間の解説や事業名です。

国はなぜ建設業界全体の生産性の向上をはかりたいのでしょうか。

大きな理由は2つあります。一つは、建設業界全体の人手不足。2つめは、建設業界における低い生産性です。

日本の建設業における就労人口は2000年頃をピークに減少し続けています。また、労働者の高齢化が進んでおり、今後退職者が入職者を大きく上回ると予想されています。

それにもかかわらず、日本の建設業界における生産性は諸外国と比較して低い状態であると言われ続けてきました。それは、バブル崩壊後の日本において建設需要が低迷したため、人余りの状態になってしまい、人件費が安く抑えられ、機械化・自動化が遅れたためと指摘されています。

これらの状況を打開する目的で、国土交通省は「i-Construction」を大々的に実施し、「ICT土工」をはじめとするICT施工を普及させようとしているのです。

民間事業者が「ICT施工」を推進する目的




ICT施工を導入する側の民間事業者の目的も、国とほぼ同じです。

建設業における労働人口は減少しており、なかなか人手が集まりません。また、従業員の高齢化が進んでいるため、技術の継承が進んでいない状態です。

労働現場における生産性は低く、「人がいないと始まらない」状態であるため、勤務時間の柔軟性は低く、長時間労働も改善しにくい環境だと指摘されています。

また、建機を扱う現場は人手が多ければ事故を誘発しやすく危険性が高まります。しかし、生産性が低ければその危険性や労働条件に見合う給与を支払うこともままなりません。

こんな環境では、若手が定着しづらく高齢化は進む一方で、積極的に案件を請け負うこともできません。

この問題点を打開する目的で、民間事業者においてはICT施工の導入が検討されています。

土木工事や建築におけるプロセスについて、ICT施工を導入することで、短時間化・省力化し、自動制御などの技術も用いて技術要件も緩和します。

ICT施工の技術をうまく活用できれば、現場に必要な人手が減少し、施工期間が短くなります。情報技術を活用した測量データや自動制御などを活用することで施工精度も上がり、出来形管理やそれに伴う書類の作成も省力化されます。現場の人手が減少し、施工精度が上がれば、事故などが頻発する危険な環境も改善されるはずです。

必要な人手を削減し工期を短縮し、事務作業を軽減することができれば、事業者は手元に利益を残すことができ、ゆくゆくは労働者に多くの賃金を分配することができるでしょう。

これが、民間事業者がICT施工を導入する目的です。

「ICT施工」でグローバルスタンダードに追いつく目的も




また、先に述べたようにICT施工には国際的な水準に追いつく目的もあります。

2000年代初頭に、日本の建設業における人件費が抑えられ、多くの事業者が設備投資や機械化を見送っているうちに、海外ではさまざまな効率化の試みが実施されました。

通商白書によると、2003年から2006年の建設業の労働生産水準はアメリカと比較して8割程度しかありません。
出典:「建設現場の生産性に関する現状」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001113550.pdf

日本国内の労働人口が減少するなか、建設業は今後海外の人材も積極的に受け入れていかねばなりません。にもかかわらず、建設の現場が非効率的では海外人材にとって魅力的な就業先ではなくなってしまいます。

また、国外のインフラ建設等に日本企業が進出する場合においても、生産性が低いままでは結果としてコストが増大し、競争力を失ってしまいます。

このため、日本国内の建設業を持続可能にするためにも、日本の建設業が海外に進出していくためにも、建設現場がグローバルスタンダードに追いつくことは避けて通れないのです。

国の目的は具体的数字目標になっている




国は「i-Construction」を通じた生産性向上を実現するため、達成目標を定めています。

「建設現場の生産性を2025年までに2割向上」が具体的な数値目標です。
出典:「i-Constructionの推進」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/001149595.pdf

ICTの導入等により中長期的に予想される技能労働者の減少分を補完すること、現場作業の高度化・効率化により工事日数を短縮することを通じて、これまでより少ない人数や少ない日数で同じ工事量を実現することで、この目標を達成することが目指されています。

とはいえ、ICT施工を実現するには民間事業者が関連機材を導入しなければなりません。その費用は高額で、費用により利益が圧迫されることになれば、なかなか普及しないでしょう。

そのため、国は多くの支援策や補助金や助成金を設けることで、2025年までに建設業にICT施工を浸透させようとしています。
出典:「i-Construction(ICT施工)の導入に関する補助金」(国土交通省) (https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000753157.pdf

拡充されてきた「ICT施工」導入への助成




民間事業者がICT施工を活用するために、国土交通省は公共事業におけるICT活用施行においてICT土工(ICT施工)の活用に必要な経費を計上できるようにしてきました。

さらに、2016年度からは新たな積算基準を設けて、ICT施工にかかわる費用を経費として計上しやすくしています。

機械設備の導入については、ものづくり補助金(略称)、IT導入補助金(略称)、人材開発支援助成金で補助や助成が得られます。

融資については、IT活用促進資金、環境・エネルギー対策資金など低利融資が受けられるほか、税制優遇も複数あります。

出典:「i-Construction(ICT施工)の導入に関する補助金」(国土交通省) (https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000753157.pdf

このように、2025年の目標達成を目指し、多くの補助や助成、支援が行われているのです。

ICT施工の目的を達成するために




現在、国と民間事業者のICT施工における目的の方向性は合致しています。

民間事業者がこの目的を達成するには、ICT施工の内容をよく知り、自身の事業にどのように活かしていくべきかを考えるだけでは不十分です。
国の取り組みの背景や支援策、助成、補助などの情報を集め、現場の運用に確実に反映していくことが求められます。

国と国土交通省が実施する「i-Construction」は現在進行形で取り組みが進んでおり、その制度は頻繁に改正されます。

この動向を把握するためには、国や地方自治体、民間事業者などが実施する講習に定期的に通う、ICT施工に関係する取引業者と定期的に情報交換をするなどして、常に最新の情報を得るようにしておきましょう。

「いまはまだ資金の余裕がない」と考えている場合でも打開策が見つかるかもしれません。
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