2020 05.14
ICT施工の基礎知識

ICT施工導入の課題とは?コスト・人材・運用・検査の現状を解説

情報通信技術を活用することで建設業の人手不足打開の鍵となるといわれる「ICT施工」。オペレータの技能要件を緩和し、施工精度を向上するなど、大きなメリットがあると言われていますが、導入するうえで課題となる点はないのでしょうか。ICT施工の実現に必要なプロセスから考えます。

「ICT施工」の理想と導入後に直面する課題



情報通信技術(ICT)を建設業の測量や設計データの作成、施工、検査などに活かすことで生産性を向上させる「ICT施工」。人手不足が深刻化する建設業界において、問題を解決する糸口として大いに期待が寄せられています。

しかし、 ICT施工はブルドーザーやショベル、ローラー等の建設機械を購入すれば導入が完了するものではありません。ICT施工の鍵となる3次元設計データの作成や出来形管理を行うレーザースキャナの活用や、ソフトウェアを使っての設計データ・納品データの作成などを同時に実施する必要があります。

これらをどう運用していくかが、ICT施工導入前と直後の大きな課題となるのです。

課題1:ICT施工導入に伴う人材の確保




ICT施工を実施するにあたって、ICT施工に関連する建機やソフトウェアを扱う人材の確保は課題の一つといえるでしょう。

建機については、ICT施工の関連機器は従前の建機の操作を補助したり、必要だった技能を自動化したりするものであるため、新たに人材を確保する必要はありません。

国や建機メーカーが開催する講習に従業員を派遣して扱い方を習得させれば、より容易かつ高精度で施工を行うことができるでしょう。また、建機の操作について技能が十分でない従業員についても、講習を受けてMC(マシンコントロール)の建機を活用すれば、自動制御で繊細な施工を実施できるため、現場で活躍できるようになります。

測量に用いるレーザースキャナについても、さほど難しい技術は必要ないため、講習を受講し販売メーカーの説明を受けることで十分扱えるようにはなるでしょう。

一方、3次元設計データの作成については、新しくソフトウェアを導入するため、ソフトウェア事態への慣れや習熟が必要になります。導入に際しては、ソフトウェアメーカーからのガイダンスを受けるほか、発注者から指定される仕様に基づいて3次元設計データを作成する際に困難となるポイントはないかシミュレーションし、課題を解決しておく必要があります。

自社での実施が難しい場合は測量や3次元設計データの作成を外注することもできますが、コスト面から考えると、国や地方自治体、ソフトウェアメーカーの講習に社員を派遣し、社内での対応を実現することが望ましいでしょう。

外注によるコスト増については、国もICT施工導入への課題として認識しており、社員に対して研修や技能訓練を実施する際の賃金や経費を助成する制度が整備されています。

課題2:ICT施工に関する不安「本当に運用できるのか」




ICT施工の導入後の運用について、不安を抱く方も多いかもしれません。それを示すように、国土交通省の資料によれば、ICT施工において起工測量や3D設計データの作成、出来形などの施工管理などを外注する割合は高くなっています。

この不安を乗り越えることも課題の一つです。

新しい技術への苦手意識から外注を行うと、コストの増加を招いてしまいます。また、多くの事業者が外注に頼ってしまうことで「ICT施工には費用がかかる」といった誤った認識が定着しかねません。
上記の国土交通省の資料でも、3次元出来形管理等の費用は、「点群データ処理以降の内業作業を自社化 すること(自社主体)で、追加的費用を半減させすることが出来る」と示されています。

ICT施工についてのコスト面の課題を解決するには、測量や設計データの作成、施工管理を内製化することが欠かせません。当初は外注したとしても、社内に担当者を配置し、講習に派遣したりメーカーからの指導を受けたりすることで育成をする計画を立てましょう。

また、これらの作業はデータを送受信する環境があればよく、施工現場に赴く必要はありません。企業によっては事務所に勤める職員が担当することも多いようです。家庭で子育て・介護を担うため時間に制約のある社員が主要な役割を担うことができる技能として、多様な人材のキャリア開発に活用する企業もあります。

課題3:メリットは分かるがICT建機導入で利益は確保できるのか




人材育成の不安に加え、ICT施工に関する建機を購入する費用についても課題と捉える方も多いでしょう。コスト管理は多くの建設事業者が課題と考える事柄です。

その場合は、自社の状況に応じて必要な建機を徐々に導入し、建機を更新していきましょう。

国や自治体が発注する工事の工程すべてにおいて、ICT施工の建機が必要なわけではありません。施工規模が小さな施工案件や、3D設計データを必要としない単純な掘削など、ICTの活用によって生産性の向上が見込めないこともまだまだ多いためです。

一部のみICT施工対応建機を導入した場合には、国土交通省の発行する最新の「施工パッケージ積算方式標準単価表」に従い、ICT施工対応建機の稼働実績の証明を添付して費用を計上しましょう。ICT施工対応建機の基準で積算をすることができます。

ICT施工は他社に先駆けることが強みになる




上記で述べてきたように、ICT施工の導入にはソフトウェアを扱う人材育成やICT施工対応の建機を購入する費用など、さまざまな課題があります。

しかし、多くの建設事業者が「課題がある」と感じている今だからこそ、他社に先駆けて導入することで、これから事業を推進するうえでの強みとすることができます。

いまは国や地方自治体を挙げてICT施工の導入を促進する「i-Construction」により、ガイドラインや施工環境の整備、規格の統一などが実施されています。そのため、建機の導入や人材育成のための補助金も得やすい環境でもあります。

また、国や地方自治体発注の工事においてICT施工を導入した事業者は、多くの場合、導入の割合に応じて評価に加点が行われます。この加点によって、その後の入札を有利に進めることもできるのです。

ICT施工の課題は解決できるものが大半




ICT施工の導入については、課題はあるものの解決できるものがほとんどです。国は建設業でのICT活用の推進をはじめた平成20年ごろから、ICT導入事例に基づいて課題や要望をヒアリングしたうえで、制度や基準を改訂してきました。

国土交通省が推進する「i-Construction」に基づく支援制度は、当初と比較すると建設業者にとって活用しやすいものになっているはずです。

しかし、それでも現在はICT施工の普及過程であるため、トラブルに見舞われることや実務において戸惑う点もあるでしょう。また、行政の動向の情報収集も負担に感じるかもしれません。

そうした日々の課題については、建機やソフトウェアメーカーの担当者との密な関係を維持しておくことで対応しましょう。情報交換や相談を密にしておくことで、建機やソフトウェア操作についてだけでなく、行政対応についても課題解決に繋がるヒントを得ることができる場合もあります。本記事で述べた課題解決への示唆も得られるはずです。

情報収集には、国や業界団体や民間企業が主催する講習も有効です。可能な限り出席して、最新の動向や現場の実情について講師や参加者と情報を交換し、有用な知見を得るようにしましょう。
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